高すぎる新米と“信頼”の価格|湯布院ZAKURO

高すぎる新米と“信頼”の価格|湯布院ZAKURO
ニュースを見て感じたこと
「新米が高すぎて売れない」——この見出しに、私たち宿を営む者も少なからず胸がざわつきました。
老舗の米屋が、新米の値札を見た客が古米を選ぶ光景を、ただ見送るしかないという現実。
それは単に「価格」の話にとどまらず、食の背景にある人と人の信頼関係のひずみを、静かにあぶり出しているように感じます。
秋の実りが喜びではなく、ため息になる――
その裏側には、長年続いてきた農家との取引や、地域経済を支えてきた営みが静かに揺らいでいる姿がありました。
おもてなしと社会のつながり
ZAKUROでは、毎日の朝食に“湯布院米”を炊き上げています。
それは「産地直送だから安心」という表面的な理由ではありません。
この土地で育ち、この土地で暮らす契約農家の方々が、どんな気候に向き合い、どんな想いで稲を植え、収穫までの季節を過ごしてきたか——
そうした物語を知っているからこそ、私たちはこの一粒一粒に、敬意を込めてお客さまにお出ししています。
今回のニュースで報じられたように、価格は「信頼」の上に成り立っています。
農家との長年の取引ゆえに、仕入れ量を急には減らせない。
「一度お願いしたのに、今年はいらないとは言えない」という、ある米屋の言葉には、売り手と作り手の“人としてのつながり”がにじんでいました。
経済原理だけでは語れないもの。
おもてなしの現場でも、それは確かに存在します。
湯布院という土地から見える現実
私たちが仕入れている“湯布院米”の農家さんも、口数は少なくとも、毎年黙々と変わらぬ工程を守り続けています。
しかしその背景では、資材の値上がりや燃料費の高騰に悩まされ、「これまでと同じ品質を維持するには、正直きつい」とこぼす声も耳にします。
都会のように大量流通の仕組みが整っていないからこそ、地方では“顔の見える取引”が支えになります。
値段だけを見て判断されるのではなく、「あの人が作った米なら信じられる」と言ってもらえる関係。
それが、地方に暮らす者にとっての、ささやかだけれど誇らしい支えです。
湯布院の朝、冷えた空気のなかで炊き立ての白米に箸をのばす。
それがどれほど尊い瞬間かを、知っているお客さまの顔を思い出します。
心を整えるということ
旅に出ると、人は少しだけ「余白」を持ちたくなるものです。
便利さや損得だけでは動かない、自分の心の奥の静かな声に、耳を澄ませるように。
この新米のニュースは、そんな“余白”を削られていく日常のなかで、私たちが何を大切にしているかを問う機会なのかもしれません。
価格が高いという現実のなかで、それでも「この米が食べたい」と誰かが思える関係を、私たちは宿の一膳から築いていきたい。
人と人の間には、数字では測れないぬくもりがあります。
旅はきっと、そのぬくもりを思い出すための時間なのだと思います。
Yufuin Luxury Villa – zakuro –
湯布院の静寂と、特別なひとときを
由布岳を望む三つのプライベートヴィラ──
Yufuin Luxury Villa – zakuro – は、
一日わずか三組だけが出会える、
静けさと贅沢が調和した大人の隠れ家です。
記念日やプロポーズ、夫婦水入らずの時間。
そして、忙しい日常を離れ、
心から寛ぎたい女性旅にも。
自家源泉かけ流しの温泉、四季を映す庭、
地元食材の朝食。
「二人だけの特別な湯布院」を約束します。
(時間 8:30–10:00・早朝出発はご相談可)
